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2017年1月 2日 (月)

爆買い中国人の現状と諸問題

1.爆買いと訪日中国人
 中国人旅行客が日本国内の家電量販店や百貨店、ドラッグストアなどで、店に行列を作って購買意欲を見せつける風景が珍しい光景ではなくなっている。その姿は日本で「爆買い」と称される。中国人が日本製品を買いあさる現状について考えてみたい。

 日本を訪れる外国人旅行者の数が増え続けている。政府が成長戦略として誘客に力を入れていることもあり、2013年に1000万人を超えた。2014年は1300万人に増え、2015年は1970万人と、2年間でほぼ2倍になったことになる。
 この訪日ブームを主導しているのは中国人旅行者である。2014年は240万人で、2015年は、その数をはるかに超える500万人となり、その勢いは止まらない。


 中国人が訪日する理由は、純粋に日本の自然や歴史・文化に触れたいという観光目的もあるのだろうが、最近多いのは「爆買い」といわれるショッピングを目当てとするものである。

 「爆買い」という言葉は、すでに社会現象となっている。この中国人の旺盛な購買意欲は、日本人の消費意欲が低迷する中、小売業界をはじめとした日本経済にとって救世主となっている。

 「爆買い」する商品は、化粧品、薬、電気製品、時計、健康食品などが上位に挙げられる。中国人の「爆買い」を支えている要因はいくつかある。為替が元高・円安になっていることによる割安感と日本製品と日本ブランドの高品質・高性能の商品を買いたいという強い意欲があることだ。

 また、中国の税金制度による内外価格差も見逃せない。同じ商品を中国で買うよりも、日本で買って持ち帰ったほうがかなり安い。通常日本の商品を中国で購入する場合は、中国の関税や増値税等がかかる。物にもよるが、日本で100円の商品が、中国で購入する場合は150円以上する。更に、日本では輸出のための免税の恩恵を受ける場合も多い。日本を訪れた中国人が「爆買い」するのもうなずける。

 中国では中国人観光客が海外で大量の買い物をする「爆買い」が、中国国内消費低迷の要因になっていると考え、日本を始め海外から持ち込み商品に対する課税を厳格にする検討もされ始めている。

 「爆買い」は大量に買って、中国の家族や友人と分け合い、または中国で転売をしているケースも多いであろう。中国人観光客が日本で「爆買い」する買い物の量は、時に家族単位で消費可能な分量をはるかに超えている。化粧品などといった消耗品はともかく、中国人に人気の炊飯器など、同じものを5個、10個とまとめてい買う中国人もたくさんいる。明らかに一家族で必要な量ではない。
 
 中国の建国記念日に当たる「国慶節」や旧正月の「春節」中国の大型連休では、「爆買い」目的の中国人観光客が大挙して来日する。そのほか、桜の開花する季節である4月上旬も、花見を目当てに来日する中国人が多い。さらに航空便だけでなく、大型船を利用しての来日も急増している。当面中国人訪日の勢いは、収まりそうな気配はない。宿泊施設が許容量を超え、東京や大阪など大都市では、出張者のホテルが取れずに困るという話がたびたび聞かれるようになった。

2.日本への不動産に関する投資に関して
 現在日本製品の「爆買い」とともに、中国からの日本への不動産を購入するケースが増えている。不動産に関しては、購入価格の面から一般の旅行者には手が届かない場合も多いが、実際に日本に来た中国の富裕層が日本のマンション、一戸建て等、不動産をどんどん購入している。中国人が不動産を買いあさる行為、それは中国人の「爆買い」の一部とみている。不動産を購入する理由は、化粧品を大量に買うのとはまたわけが違うが、ある意味では共通する部分がある。その理由を探ってみたい。

・中国でバブル崩壊危機
 経済成長を続けてきた中国だが、ここ最近はその成長にかげりが出てきた。GDPや経済成長率といった数字をみても、鈍化しているのが明らかである。今後の中国にこれまでの成長が期待できるかというと疑問符がつく。
 中国の経済は日本の経済成長期やバブル期に似ているという指摘も多い。今後バブルが崩壊し、不動産は暴落するのではないかという不安は、現地に不動産を持つ中国人が懸念する部分である。これまで、経済成長を続けた結果、会社や個人の余った資産は、株式投資や不動産投資に向けられてきた。中国のマンションは高騰し、上海や北京のマンションは庶民の手に届かない値段となってしまった。過去10年で北京や上海の不動産価格が北京や上海では約4倍の上昇をしたというデータもある。
 10年前に2000万円で買ったマンションが、いまは8000万円になったという計算になり、これが中国人が「爆買い」の源となっている。大都市に関しては、中国の経済が減速したそのあとにも不動産価格が上がっていることもあるようだ。一般の会社員がローンを組んで買えるような価格でないと、ごく一部の高額所得者にしか不動産は売れない。新築マンションで売れ残りが出てくるようになれば、いずれ価格は暴落するのではないかと予想もされている。
 自分の不動産の価値が目減りする、つまりバブルが崩壊する前に、リスク回避のために日本の不動産を取得しておこうという考えで、日本の不動産に興味を持ってきたのである。

・中国の不動産は購入しても使用権、それに対して日本の不動産は所有権
 中国の土地は国家や自治体が所有するもので、個人が所有することはできない。不動産を購入する際は、70年等期限を決めた当該不動産の使用権となる。中国はまだ不動産を個人でもてるようになってからまだ20年程度である。使用権は更新できるということになっているが、70年後のことは誰にもわからない。将来中国政府に返さないいといけないといけないのでは、という不安もあるだろう。
 何でも自分のものにしたいというのは、人間の基本的な心理である。富裕層の中国人にとって、日本の不動産で所有権を持つということは、個人の財産として大きな魅力となる。
 
・日本の環境がいい
 初めて日本に来た中国人の日本に対する感想は、まちがきれいで環境がいいということ。空は青く透き通っていて、ごみは街中でほとんど見かけず、公園は整備され、道路の脇に花壇が整備されている。外国人が最初に見る日本は、降り立った空港というケースが多いだろうがっっっっっぁああ、空港のきれいな雰囲気がまずは目につく。そこですでに日本に魅了される。鉄道など交通網が整っていて、都会にいれば、JRや私鉄や地下鉄で快適に移動できる。
 中国の環境悪化は、今更詳しく言及するまでもないが、大気汚染の問題がある。中でも北京や上海の大気汚染はひどいと言われる。経済成長を推進してきた結果、環境対策が後回しにされた結果である。暖房や燃料として石炭使用量が増え、車やバイクの急激な増加に伴う環境悪化も少くないであろう。この部分は、日本の高度成長期の公害病や、その当時の日本の状況と似通っている。
 日本に長期で滞在している中国人は、中国に帰ったとき体調を壊し、日本に帰国したときに体調が戻るということもある。日本の青い空にほっとするという。日本に住み慣れた中国人は、実際に中国に帰りたくなくなる人も多い。
 自然環境や空気がきれいというだけではなく、日本は世界的に見ても治安がよく安全な国といわれてる。また法制度やインフラなど設備や制度も整っていて、粗悪な物件を高額で売るような悪徳業者は比較的少ない。不動産を安心して買えるということも、中国人にとって魅力であろう。

・物価と円安の影響
 長い間日本の物価は高いと言われてきた。10年、20年前に中国に出張や旅行に行ったことがある日本人は、中国の物価の安さに感動さえした記憶があるはず。工場で働く中国人の賃金は、1か月に300~400人民元程度、街中で売っている食品、衣類や日用品は10元以内ととても安かった。中国の物価は安い、というイメージを持っていた人は多いと思う。

 ところが、中国の経済成長が始まったここ数年で、中国の物価の高騰してきた。人件費が上がり、商品の価格もどんどん高くなってきた。中国の物価高騰に比較し、日本では長期のデフレ影響もあり、物価上昇は緩やかだった。その結果、日本と中国の物価の差がなくなってしまったことに気がつく。日本人が中国に行くと、物価は日本より高いと思えるほどである。

 中国人にとっては、この逆の考えであっただろう。ずっと日本のものは高いというイメージがあったが、気づくと今や日本に来る中国人は、いろんなものが安いというイメージに変わっている。以前は、高いと思っていたから、なおさらだろう。

 加えて、ここ数年の円安である。2012年には1ドル80円程度であった為替レートは2015年には120円に急落した。実に4割以上である。外国人投資家からみる日本の不動産価格はそれだけ下がったことになる。

 10年、20年前は日本では絶対購入できないような安い価格で、中国のマンションが購入できた。今はマンション自体が高騰し、なかなか手が出せなくなった。現在の日本の不動産価格を見て、旺盛な購買欲をもっている中国人が見過ごすはずはない。購入意欲が連鎖的に出てきたのであろう。

・投資目的
 2020年に東京オリンピックが開催される。オリンピックまでは、日本の不動産が上がり続けると予想する中国人は多い。2000年台に中国では北京オリンピックや上海万博を経験し、大儲けした不動産所持者がたくさんいる。オリンピック直前に物件を売りぬく等、中国でやったことと同じように、ここでまた一儲けと考える中国人も多い。
 
・中国人不動産購入に対する日本の政府の対応
 日本の不動産は、お金さえあれば原則誰でも自由に購入することができる。購入時に、国籍の要件は基本的に問われない。ローンを組まない場合の必要書類は、不動産登記の際の印鑑証明だけである。中国の場合、印鑑を公証書にしたものを提出する。極端に言えば、現金があれば、不動産は買えるのである。不動産の「爆買い」を始めた中国人に対して、このままでは、日本の土地建物が中国人に取られてしまうと心配する意見も聞こえるようになってきた。また、不動産所有者にかかる固定資産税や、相続税などの徴収の問題も懸念される。

 日本の新築マンションで、建築販売時に中国人に対する販売を例えば2割など一定割合にする物件も出てきた。そこには強制力はなく、実際売れてみたら半分近くが中国人となった物件もある。
海外からの中国人は基本的に即金で買うので、ローンなどを組む審査やそれに関する事務など手数が減り、販売する側も手っ取り早いのであろう。

 現在のところ、日本政府は外国人の不動産購入対策として、何の対応もしていない。法律上対策をとることは難しいかもしれないが、政府としてこのまま放置しておいていいのか考える必要もあるだろう。極端な話、日本全土の半分の不動産が中国人の名義となった・・となれば、いくら自由に販売する権利があり、自由に購入する権利があるといっても、日本の国はおかしな状況とならないか。政府が対応を考え始めた時点で、遅きに失すとならなければいいが。


3.日本での会社設立


投資と言えば、不動産だけではない。出資して日本で会社を作り、起業をする中国人も増えてきた。

 これまでは、日本に在住する中国人が会社設立するケースが多かったが、最近は中国から短期滞在のビザで来日して、会社を設立することが多くなってきた。
 それは日本で不動産を買うと同時に、会社を設立する中国人が多く、また会社を設立した中国人社長は、不動産を買うという図式である。不動産を買ってもビザが出ないので、会社を設立して、日本で何らかの事業を始め、会社経営とともに日本に滞在しようと考える人が増えた。

日本の会社組織はいろいろあるが、一番多く利用されているのは株式会社である。


外国企業が株式会社を設立するために必要な手続きは、ほぼ日本人が会社設立する場合と同じ。書類に関しては、発起人と代表取締役は現地での書類(印鑑証明書または署名(サイン)証明書)が必要となる。


株式会社設立の流れ

①会社名の決定   
社名には会社の前か後ろに株式会社の文字を入れる
②会社の全容の決定
・目的(事業内容)、本店所在地、資本金、発起人、取締役、監査役、事業年度、取引銀行などを決める
③会社の印鑑(代表者印)を作る
・直径1cm以上3cm以内
④印鑑証明の取得
・発起人、取締役就任者の印鑑証明書  
⑤定款を作成する
・定款は会社の基本となる内部の規定を記載したもの。②で決めた内容を記載し、正式書面として作成
⑥定款の認証を受ける
・公証人役場で、作成した定款を認証してもらう
⑦出資
・取引予定の銀行またはその他の金融機関に、設立する会社の資本金となる株式の払込みを行う
⑧取締役、代表取締役等の決定
・代表取締役の選任、本店所在地の詳細の決定などを決め、議事録を作成
⑨登記申請書の作成
⑩管轄の法務局へ登記申請
・登記申請書・定款1部・議事録等をまとめて管轄する法務局に提出。約1週間で完了し、登記事項証明書等設立した会社の書類が取得できる
⑪役所へ会社設立の届け
・税務署、都道府県税事務所、労働基準監督署、公共職業安定所等へ会社設立の届けを提出

 会社設立をする過程で、会社の発起人となる人または取締り役個人の日本の市中銀行の口座が必要となる。そのために、日本在住の友人に協力をしてもらい、会社の発起人または取締役に参画をしてらい、共同で設立するというケースも多い。


2.ビザ及び在留資格の件

来日するためのビザ(査証)の手続き

 日本のビザ(査証)の制度は、日本にある入国管理局で、あらかじめ書類等を審査し、在留資格に適合しているか確認をし、在留資格認定証明書を交付してもらう必要がある。

 ビザ(査証)は日本大使館等で申請をして取得するもの。しかし、結婚や就労を目的とする場合など、長期的に日本に在留をするためのビザを申請する場合、海外にある日本大使館や領事館では、審査がやりにくいという面がある。このようなことから、日本にある入国管理局が日本に入国、在留を希望する外国人が行う活動がそれぞれのビザ(在留資格)の条件に適合しているかどうかを審査し、その条件に適合すると認めた場合に在留資格認定証明書という証明書を交付する。この在留資格認定証明書を日本大使館や領事館に提示してビザ申請をすれば、入国および在留の条件に適合していると認められ、ビザの発給を受けることができる。

在留資格認定証明書申請からビザ取得、日本入国までの一般的な流れ


【日本国内】
在留資格認定証明書交付申請(日本の入国管理局へ)本人または代理人
      ↓
在留資格認定証明書交付(日本の入国管理局より)日本にいる本人または代理人に送付
      ↓
【日本国外】
最寄りの日本大使館または領事館にて在留資格認定証明書を提示してビザ申請
      ↓
日本大使館等でビザの発給を受ける
      ↓
【日本国内】
日本入国(上陸許可 在留資格認定証明書交付から3か月以内に行う): 上陸港にてパスポートとビザを提示する。その際在留資格認定証明書を提出し、パスポートに上陸許可の証印を受けるとともに、日本に中長期在留する外国人に対し在留カードが交付される。
「在留カード」は、入国管理局が発行するもので、在留中長期在留者に対し、在留資格があることを証明するものであり、在留に係る許可に伴って交付される。


 なお、在留資格「短期滞在」については、在留資格認定証明書交付の対象とされてはいない。短期間の旅行や、日本にいる親族を訪問、商談等の目的で90日以内の日本を訪問する場合は、直接現地の日本大使館または日本領事館で所定の手続きを行うことになる。

 アメリカ、イギリス、韓国、台湾などのパスポートを持っている外国人は査証の相互免除の制度が締結されており、短期間の訪問であれば、ビザを取得することなく来日することができる。中国本土は、そのような措置が取られておらず、ビザを取ってから来日することになる。
 
 数年前から、中国人の短期滞在ビザの要件が少しずつ緩和され、団体旅行の訪日ビザは、かなり緩やかに審査されるようになった。沖縄に一度行けば、数次の訪問ビザが出るような制度もできた。年収の要件もあるが、富裕層にとっては朗報だろう。来日するためのビザが出やすくなったことも「爆買い」の要因となっている。

※現在中国の日本大使館及び領事館では、中国人が直接来館して手続きを行うことができず、住居地の代理機関を通じて手続きを行うこととなっている。

 よく間違った認識をする人がいるのだが、日本では、マンションや一戸建て、ビルなど不動産を購入したということだけでビザ(在留資格)が認められることはない。高額な物件を手に入れたからと言って、それだけで日本に住むことはできないし、日本に来ることさえできない。日本に滞在したり訪日したければ、先に何等かのビザを取得しなければならない。
 
 中国の富裕層は、一般の企業に就職してビザを取るというようなことはあまり考えられず、自ら会社を興して日本で起業を始めるケースが多い。新規に投資して会社を設立した場合、来日する外国人は「経営管理」の在留資格を取得することになる。
 「経営管理」の在留資格は以前「投資経営」という名称で、2015年から名称変更されたもの。現在でも投資経営といった方がまだ通りやすい場合もある。

一般的な「経営管理」の在留資格を取得するためには
1) 500万円以上の出資
2) 事業所の確保
3) 事業の安定性
この3つの要件がそろわないと、在留資格は認められない。

1)の出資の問題であるが、不動産をポンポン購入することができる中国の富裕層にとって、500万円の金額を出資することはわけないと思われる。

2)事業所は、物件を購入すれば、その場所を事業所として、会社の本社にし、事業を進めることができる。
 事業所を賃貸物件で利用する場合は、日本独特の問題がある。日本の多くの物件は、部屋を賃貸をする際に連帯保証人を求められる。保証人は誰でもいいというわけではなく、ほとんどの場合日本人か永住の在留資格がある外国人に限られるということが多い。これは、初めて日本に来る外国人にとっては大きなハードルである。

3)事業の安定性に関しては、中国で事業をやっていて、同じ事業を日本でやるとなった場合には認められやすい。事業がうまくいく可能性が高いと思われる。
 日本に長く居住歴があり、日本語が堪能という場合でない限り、初めてやる事業では難しく、なかなか許可されない。

 いずれにせよ、入国管理局での審査があり、審査が通らなければ許可されず、入国することができない。物件を買ったから、会社を作ったからといってビザがでるわけではなく、経営管理の在留資格の条件に合うかどうか厳格な審査がなされ、簡単には降りない。

 下手をすれば、大きな物件を買ったのにビザがでず、来日することができないという事態におちいる。
 
3.日本のバブル期との比較
 日本の1980年代のバブル崩壊と中国の現状とを比較されることが多い。両国の共通点としては、とてつもなく高騰した不動産価格の崩壊や、株式市場の急激な上昇がある。そして、日本が激しいデフレによる「失われた10年」ないし「20年」に苦しんだのと同様に、中国も物価下落に直面しかけている。
 世界中の資本が投入され、世界の工場となった中国の企業は、鉄鋼、石炭、セメント大量に生産してきた。その結果、生産過剰の現象が生じてきた。生産過剰は価格競争を招き、商品の価格はどんどん下がる傾向になりつつある。
 日本のバブルの時期でも、アメリカのニューヨークのビルや有名な絵画などに投資目的で購入した企業も多かった。フランス産の化粧品やイタリアのブランドものにあこがれ、手にいれる日本人もたくさんいた。現在の中国人の「爆買い」には及ばないが、経済成長の過程で過去には似たようなことを日本がしていたのである。

 1990年代の日本と2015年の中国は似ているところも多いが同じではない。また中国は過去に日本経済に起こったことから学べる教訓がある。

 4.今後の動向

 1990年台にバブル崩壊後、日本の企業の業績が悪くなり、長い間の不況が続いてきた。日本だけでなく、世界全体の経済が停滞する中、いつしか中国経済が台頭し、毎年10%という驚異的なペースで経済成長を続けてきた。欧米諸国や日本は、さまざまな形で中国に投資し、世界の工場と言われるようになった。北京オリンピックの開催、上海万博の開催等、世界中が注目する派手なイベントも成功させ、世界の注目を集めてきた。2000年台は中国の一人勝ちかと言われ躍進を続けた。順風満帆にも見えた中国の経済にもかげりが見え始めている。上海株式市場の急落、貿易総額の減少、人民元の切り下げといったさまざまな出来事が起こり、中国経済は一時の勢いを失っている。


 中国人旅行者の「爆買い」は、中国人のマナーの悪さなど問題も散見されるが、ずっと低迷し続けてきた日本経済を救世主となっている。旺盛な中国人の購買意欲は、日本人にはないものである。経済が停滞していかけている中国で、中国人が中国で買い物をせず、外国に行って買い物をしまくっている状況は、誰が見ても不可思議な状況ではある。中国政府も国内経済が空回りをしかけている中で、この状況を見過ごすわけにもいかず、何らかの対策を講じる可能性も高い。すでに中国経済の停滞の一因が海外での爆買いにあるとして、何等かの対策を講じようとする動きもある。経済成長をする以前の中国は、外貨管理が厳しく、外国への振込みや海外へ持ち出しの現金が厳しく管理されていたことを記憶している人も多いだろう。最近は手荷物での輸入関税の引き上げや、中国の空港での手荷物検査等が厳しくなったということも聞くようになった。
 
 中国政府の介入で、日本で「爆買い」する中国人の購買意欲も急減するのでは、との懸念もささやかれている。今後来日する中国人の数と「爆買い」の意欲に影響が出るかもしれない。ただ、現在では不動産を含む中国人の日本の購買熱は、東京オリンピックまではこの状況が続くという意見が多い。短期的には、しばらくはこの状況はさらに加熱し、「爆買い」現象が急激に冷え込む可能性も低いのではないかと思う。

 ただし、「爆買い」の原資となり、経済成長でだぶついていた中国マネーも永遠ではない、中国の経済が本当に冷え込んだときは、日本に来て「爆買い」をやっている余裕はなくなるはずである。長期的に見るならば、この投資ブームと消費ブームもいつかは平準化し、勢いも収まってくると考えるのが普通であろう。


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